『矯正認定医が考える矯正中に正中がずれてきた場合の原因と対処法とは?』
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『矯正認定医が考える矯正中に正中がずれてきた場合の原因と対処法とは?』
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渡邉 博人 日本矯正歯科学会認定医/町田駅前矯正歯科医院長
『矯正認定医が考える矯正中に正中がずれてきた場合の原因と対処法とは?』
矯正認定医(日本矯正歯科学会)が考える矯正中に正中(上下の歯列の真ん中)がずれてきた場合の原因と対処法について今回は書いていきたいと思います。
本ブログは、日本矯正歯科学会認定医としてのいち意見としてお読みください。
矯正中に最初は上下の真ん中の位置が合っていたのにずれてきてしまうことは、びっくりして不安になりますよね?様々な原因が考えられますが、まずは初動として大事なのは、担当医にすぐに相談することです。『想定内の正中のズレ』なのか?『想定外の正中のズレ』なのかを判断する必要があるからです。
『想定内のズレ』か『想定外のズレ』かの判断を早めにするためにも担当に早めにお伝えください。
矯正治療は、マイクロな細かな歯の動きで考えると常に歯は毎日少しずつ動いています。そのために1ヶ月連絡が遅れると想定外の歯の動きであると、その分余計に動きすぎることがありますので、正中がどんどんずれるようなことがあれば、矯正歯科クリニックへご連絡ください。
上下の前歯の正中のズレがあります。矯正治療で正中を合わせつつ、並べていきます。
矯正治療での『正中』『真ん中』の位置について説明します。上下の前歯の正中が最終的に合う状態が理想です。上下の前歯と奥歯の大きさの割合(アンテリオールレシオやトゥースサイズレシオ)の差があると上下の正中が合わない原因になりますので、歯の大きさを調整する場合があります(IPRやディスキング)。また上下の前歯の正中のずれの他にお顔自体と上下の正中がズレている場合があります。お顔の正中は、鼻の鼻中隔、人中を指標としてみることが多いです。それらが大きくズレている場合には、矯正治療や外科手術併用の矯正治療の対象として考えられます。
鼻中隔は鼻の穴と穴の間にある境界です。正常な鼻中隔の場合には、顔面正中の指標になりますが、鼻中隔自体がずれている場合には、正中をどこに置くかを慎重に検討しなければなりません。 鼻中隔湾曲症の
顔面正中には白い線が引いてあります。鼻中隔の下の上唇のくぼみを人中といいます。顔面正中の基準にすることができます。正常な人中かどうかも確認が必要です。
矯正中の正中のずれてきた原因①
『歯並びが変化して、上下の当たり方が変わった』
原因①での正中のずれは『下顎のズレ』の場合です。上顎の正中と顔面正中(鼻中隔と人中)の位置には問題がない場合です。上顎の正中がずれている場合も原因②で説明していきます。
矯正治療中は全ての歯を正常なかみ合わせにするためにダイナミックに動かします。そこでは正しいかみ合わせに行き着くまでの過程でどうしても余計な歯どうしが当たってしまって下顎の位置が変化する場合があります。患者さんの自覚症状としては、今まで噛んでいたところと違う場所で噛んでいると感じられるかもしれません。噛み癖が変わった状態になります。この場合の正中のずれは、想定内の歯の動きであり、最終的には真ん中の位置を合わせるように治します。
☞対策
治療をアポイント通り進めてください。正中のずれに関しては矯正歯科の担当医に念のため伝えておくのが良いでしょう。また一部の歯だけが強く当たって下顎が大きくずれる場合には、その歯に症状が出たり、痛みが強くなって歯にダメージが残ることがありますので、注意が必要です。その場合には、奥歯を高くして強く当たっている歯を早く当たらない位置まで動かす方法もあります。
青い部分が奥歯を高くするための、接着材です。奥歯を高くして、干渉している部分のロック部位を外し、干渉している歯のダメージをなくし、正常に顎運動をするように調整する場合者もあります。
矯正中の正中のずれてきた原因②
『お顔の真ん中と上顎の正中がずれている』
上下の前歯の正中はほぼ一致していますが、上顎の正中が鼻中隔と人中に比べて右側にあります。このズレを治すのには歯科矯正用アンカースクリュー(矯正用インプラント)の使用が必要になることがあります。
上下歯列の正中は合わせるのは、大切ですが、それとともに上顎の正中とお顔の正中(鼻中隔と人中)も矯正治療後に合っているのもとても重要です。原因①の下顎の位置は、矯正治療中の処置でズレを治すことが可能ですが、上顎の正中は、正中をずらすことのできるスペースがないとズラすことが非常に難しくなってきます。スペースが少ない状態で、正中のズレが残っている場合には、早めの対応が必要になりますので、担当医にすぐお伝えするのが良いでしょう。最初の精密検査後のコンサルテーションでお顔との正中のずれがあれば、抜歯矯正でスペースを確保して治療に入るのがセオリーです。
その方向で動かしておれば、問題はありません。時期に正中の位置は治療過程で治っていくでしょう。
ダイナミックな正中の改善には抜歯が必須になりますが、加えて抜歯スペースがある間の移動が必要になります。スペースがなくなれば、うまく正中を合わせづらくなります。(上顎左側第一小臼歯の便宜抜歯)
しかしスペース少ない状態での上顎の正中のずれは注意しなければなりません。限られた少ないスペースでの歯の移動が必要なので歯の動きがとてもシビアになったり、またスペースが完全になくなった場合には歯科矯正用アンカースクリューが必要になります。
抜歯スペースがない状態での正中のズレの修正は、歯科矯正用アンカースクリュー(矯正用インプラント)で歯列ごと回転させて動かすことが必要になります。
☞対策
この正中のズレは下顎の噛み合わせの干渉によるずれよりもシビアなコントロールが必要になる場合かあるので、ここでも割と早めに矯正歯科の担当医に伝えるようにしてください。抜歯したスペースが残っている状況の方がうまくコントロールがしやすいです。また必要に応じて歯科矯正用アンカースクリュー(矯正用インプラント)の処置も必要になる場合があります。
『変だな』と思ったらすぐに矯正医にご相談ください。早めの対応がよい結果を招きます。逆もしかりです。
抜歯矯正で、十分スペースがある状態での正中の僅かなズレは矯正医の想定範囲内ですが、歯の動きが早く、早い時点でスペース量が少なくなったときの正中のズレはシビアなコントロールが必要なので、想定の範囲を超えることがありますので、注意が必要です。
矯正中の正中のずれてきた原因③
『下顎の位置が自体が日に日に横にズレていく』
顎関節が変形をして関節の頭が吸収して左右の関節の長さが変わってしまう場合が稀ですが起きることがあります。PCR(進行性下顎頭吸収)と言われており、とても症状が強くでるので、いきなり左右に顔が歪んだり、下顎が後ろに引けてしまったりするものなので注意が必要です。PCRの男女比は1:10と女性に多く、特に10から20代の若い世代と50代以降の世代に多いことがわかっております。50代以降の患者さんの場合には、リウマチなどの自己免疫の病気を併せて持っていることがありますので、専門の施設での精密検査が必要になります。
※PCR(進行性下顎頭吸収)について詳しく知りたい方は以下のリンクへ
https://medicalnote.jp/contents/180522-001-EQ
☞対策
下顎頭吸収の進行中は、積極的な治療が乏しいのが現状なので、進行性下顎吸収らしき状況になる場合には、一度矯正治療を中断して吸収が落ち着いてから、治療を再検討し進めた方が良いでしょう。下顎を安静にするスプリントなどを入れる場合があります。顔の変形が強く出る場合には、手術を併用した保険適用の矯正治療である顎変形症の手術が必要になることが多く、保険適応専門の病院での治療を進めていくことが重要です。
関節の炎症による下顎頭の吸収や変形が見られます。
矯正中の正中のずれてきた原因④
『もともとの治療計画で最初から正中を合わせない咬み合わせにする場合』
矯正の患者さんを見ていると、歯並びが綺麗に並んでくると逆にズレているところが気になる傾向があります。上下前歯の正中のずれが大きくなっている場合には、早めの対応が必要ですが、矯正治療のよくある咬み合わせの作り方で、最初から上下から正中の位置を合わせない噛み合わせもあります。これは特に前歯が一本生まれつきない人やスペース不足解消のために下の前歯を1本抜いた人は、基本的には上下の真ん中の位置は合わせません。矯正的な専門用語では、『スリーインサイザー(下顎3本切歯』と言われます。これは矯正の治療学としての咬み合わせで存在しております。この方の場合には、元々上下の真ん中の位置は合わせないので、合わなくても心配はいりません。奥歯は正常な咬みあわせと同じですのでしっかり咬むことができます。念のため、最初治療方針を思い出し、担当医にも説明を求めるのがよいでしょう。これは『想定内』の歯の動きになります。『スリーインサイザー(下顎3本切歯』の方の矯正治療では上下の前歯の大きさの割合を整えるために、上顎の前歯の大きさを調整する場合があります(IPR、ディスキングと呼ばれます)
☞対策
確認のため矯正歯科の担当医に確認をして、そのまま治療を進めていきましょう。
『スリーインサイザー』の方は、通常の診療でもよく出会います。比較的日本人にはこのような方がいらっしゃいます。
【番外編】
矯正中ではなく、矯正前に上下の正中のずれがある場合には注意しなければならないことがあります。
それはその上下の正中のずれが
『上下の歯列のずれが原因なのか?』
『上下の顎の骨格のずれが原因なのか?』
『それともどちらも原因なのか?』
などをしっかり分析をしてからでないと間違った治療を行い矯正治療の失敗を招きます。
大きな基準として『4ミリ以上の上下の正中のずれがある』と抜歯矯正や手術の併用が必要な矯正治療になる可能性が高いです。
手術併用の矯正治療の場合には、『顎変形症』という保険適応の矯正治療になりますので、費用面も全て自費治療の矯正治療よりも若干低くなる傾向にあります。
ご自身でどちらか迷われる場合には、矯正認定医のいる矯正歯科専門クリニックで、ご相談されるのが良いと思います。なぜならば、日本矯正歯科学会の認定医を取得している先生は手術併用の矯正治療経験がないと取得できないので、手術なしと手術ありをどちらも経験しています。
どちらも経験している先生の方がケースバイケースで適切な診断をしてくれるはずです。
【矯正認定医のひとこと】
矯正治療における『正中』は患者さんのお顔の真ん中を決めることともイコールです。ヒトのお顔は、完全な左右対象のヒトはおりません。そのため正中の位置は、若干の個人差があります。その正中を担当医と患者さんでお互い確認してから治療することがとても重要になってきます。お互いの食い違いがあるとトラブルの原因になります。また正中の位置を一度決めると大幅な変更にはとても時間と労力が伴います。
一番良いのは、初診カウンセリングの際にご自身で考える『正中』についてよく担当ドクターにお話しするのが良いと思います。そして精密検査後のコンサルテーションで、ドクターの意見とご自身の意見を鑑みて治療方針を決めていくのが失敗しない矯正治療だと考えられます。また、失敗しない矯正治療の選び方としては初診カウンセリングをいくつか回られて、正中に対する考え方がシビアで納得できる矯正医に治療をしてもらうのが安心だと思います。またもし顎変形症の可能性も考えられるためご自身でお顔のズレも大きい気にされる場合には顎変形症(保険適応で手術を伴う矯正治療)を扱っている病院にも行くことがよりよい選択ができると思います。
町田の矯正歯科・マウスピース矯正(インビザライン)、裏側矯正(舌側矯正)、部分矯正
町田駅前矯正歯科:
https://machida-kyosei.com/
電話番号:042-732-5775
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